「ご、ごめんなさい、急にこんな話をしてしまって……」

「…………」

「あの、今の話は私がここでピアノを弾いていたことも含めて、黙っていてもらえるとうれしいです……!」


唐突な私の話を、黙って聞いてくれていた彼。

困惑させてしまったと思い、あわてて話を切り上げると、胸の前で握った自分の手に力を込めた。

私って、本当にバカだ。

こんなことを突然話したら、相手を困らせるに決まってるのに。

だけど、どうしても今、彼の前で言葉にして吐き出してしまいたかった。

それはやっぱり、私の心が弱いせいなのだろう。


「……それなら、俺も同じだよ」

「……え?」

「君が本当の君じゃないって言うなら、今の俺も……同じだ」

「同じ……?」


彼の背後のカーテンが、音もなく小さく揺れた。

胸の前で握っていた私の手に、彼の手が伸びてきて静かにふれる。

氷のように冷たい手。

彼の持つ温かな空気とは、まるで正反対で思わず身体がビクリと揺れた。