「ありがとう……でも、大げさです」

「大げさ?」

「だって、私のピアノは人前で弾いて聴かせるようなものじゃないから。なにより今の私は、本当の私じゃない……」

「……本当の、自分じゃない?」


繰り返された言葉に、小さく首を縦に振った。


「その上、今の私は、大好きな友達に嘘をついた、最低なヤツなんです」


どうして、今。

出会ったばかりの彼に、こんなことを話しているのか自分でもわからない。

だけどなんとなく、彼には話せるような気がした。

温かな雰囲気を持つ彼に……聞いてほしいと思ったのかもしれない。