「もう、最悪……。私って、全然ダメ……」
けれど、思わず私がうなだれた瞬間。
「そう? 俺は、すごく好きだけど」
「……っ!?」
突然背後から声が聞こえて、私ははじかれたように振り向いた。
その拍子に肘が鍵盤にふれて、ジャーン!という乱暴な不協和音を奏でる。
「な……な……っ」
「うわ……今の音は、うるさかった」
「い……いつの間に!?」
不可抗力で鳴ってしまった音に対して、不愉快そうにひそめられた眉。
音楽室の後方に押しやるようにまとめられた机の、窓際のいちばん前の机の上に──声の主である“ 彼”は座っていた。