「……はぁ」


最後の音を耳にとらえると、ふたたび音楽室は静寂に包まれた。

演奏の余韻にひたる間もなく鍵盤の上に手を置いたまま、私はひとり、ため息をこぼす。

重くなった心の中で思うのは……大切な、私の友達のこと。

──サキ、ごめんね。私はまた、嘘をついた。

心の中でつぶやいた謝罪は、朝のやりとりからくる罪悪感のため。

私……サキには、もう何年もピアノは弾いてないと言ったけど、本当はほぼ毎日、こうしてここにピアノを弾きに来てるんだ。

高校一年生の頃、先生に言われて資料室に使わなくなった荷物を置きに来た時、偶然見つけたこの場所で……。


【第三音楽室】


だれもいないこの場所で、私はひとり、ピアノを弾き続けている。

それなのに、親友のはずのサキに、この場所のことも、ピアノを弾いていることも言えずにいるんだからどうしようもない。