私を引っ張るコウちゃんの手は大きくて、でも冷たくて、その手を握ってついていくのに必死だった。


「迎えになんて、来なくて良かったのに」

「迎えに行ったんじゃない。連れ戻しに行ったんだ」


冬の夕方の空は、なんだか薄い寂しい色で、春には桜の花びらが落ちている筈のこの並木道には、落ち葉が昨日の小雨で濡れていた。

吐きだす息は白く、目の前のコウちゃんの背中を何度も霞ませた。


「やだ離して、うざい!」

「う、うざっ……!? やだね!」

「うざい! きもい!」

「いつからそんな言葉づかいするようになったんだ!」

「もう関わりたくないっ、もうコウちゃん離れしたいっ。なんでまたこういうことするの、そんなに私のこと傷つけて楽しい?」

「……マメ」

「舐めないでよ、私が今まで、どんだけコウちゃんのこと、好きだったと思ってるの……っ?」

「マメ」