「じゃあこの文、訳してください。遠藤」

「……はい」

「なんだその助けを乞う間と目つきは」

「……うう」


冷たい視線を送る教師の威圧感と、教室のしらーっとした空気で、私の焦り具合はマックスだった。


……小学生の頃から殆ど同じメンバーで学んで、遊んで、成長してきたから、私の世界は、殆どこの巨大な私立の学校で成り立ってきた。

高校から入ってきた外部の子はなんだかキラキラしてて、まぶしかった。

中学の子と集まるんだ、とか。小学生の頃の塾の仲間と偶然再会して、とか。そういう話を聞くたびに、私の世界は、この子よりずっと狭いんじゃないかと感じて、ひどく羨ましかった。

そのことをいつかコウちゃんに話したら、『バカだなお前、人間関係はな、狭く深くなんだよ』と言っていた。私はその言葉に凄く励まされた。

翌年彼は無事外部の進学校に合格して、誰彼問わず女の子にLINEのIDを聞きまくっていたと聞いて、言ってることと全然違ったので幻滅した。


でも、外の世界にいるコウちゃんは、凄く楽しそうで、コウちゃんはやっぱり、この学校じゃ物足りなかったんだろうなと感じた。