コウちゃんが、ピタッと止まって、私の方を振り返った。
絶えず震え続けていた携帯の電源を、コウちゃんが切った。
私は、ケロッとした表情で、『もういいんだあ』と、もう一回言った。
「なにそれ、どういう意味?」
「コウちゃんともうデートしなくていい」
「……それの意味が分からないって言ってるんですけど」
「もう別れていいよってこと」
コウちゃんが、静かに自転車を並木道の端に止めて、私に近づいてきた。
「マメ、分かったから、一回家で話そう」
コウちゃんのこんなに真剣で冷静な声、初めて聞いた。
「コウちゃん、分かってないよ」
寒くて、唇が震える。
「分かったから。一回もっとちゃんとした場所でマメの話が聞きたいって言ってるんだ」
手が、嘘みたいに感覚が無い。