「……で?」
「ん?」
「なんか話あんだろー、迎えに来るってことは」
コウちゃんが、自転車を片手で押して、もう片方の手で携帯をいじりながら聞いてきた。
私は、コウちゃんの少し後を歩いて、『コウちゃんの携帯は常に震えてるねー』と笑った。
「で?」
「あのね、明日のデートね、行けなくなっちゃった、ごめん!」
「……なに、また母親と、父親のカード使って美味いもん食いにいくんか」
「そうなのー! たまたま予約とれなかったお店の枠が空いたらしくて!」
「父ちゃんに心の底から同情するわ……」
「えへへ」
「……まあ、じゃあまた別の日にするか」
「ううん、もういいよ」
「……は?」
「もういいよ、コウちゃん」