コウちゃんはつけっぱなしだったヘルメットを床に置いて、上着を脱いだ。
コウちゃん、ヘルメットも取らずに、そんなに焦ってここまできてくれたんだ……。
そう思うと、また胸がきゅんとしてしまった。
こういうところずるいんだよなあ、コウちゃんは。
コウちゃんの部屋は、凄く汚くて、漫画は散らかってるし、絶対1回しか弾いたことないだろっていうギターあるし、でもアイドルの写真集はまるで仏様のように綺麗に飾ってあるし……。
まさに男の子って感じの、男臭い部屋。
お風呂から出たコウちゃんは、スウェット姿で髪がぬれたまま部屋に戻ってきた。
俺は髪が乾くまでアイドルのブログの更新をチェックするのが一日で一番幸せな瞬間なんだ、と彼は言う。
床で胡坐を掻いて携帯をいじっているコウちゃんに見られないように、ひっそりとコウちゃんのベッドに潜り込んだ。
あったかくて、柔らかくて、優しい匂いがする。コウちゃんの匂いがする。
好きな人の匂いって、どうしてこんなに落ち着くんだろう。