ナミとのことがあってから、学校に行きたくなくなったし、実際に体調は悪くなったりした。

でも、家に逃げても専業主婦やってるお母さんがいるわけで、まだ冷戦中の似た者どうしのわたしたちはお互いいらいらしてしまうだけ。ズル休みなんてした日にはまたなに言われるかわかったもんじゃないし。


毎日重たい身体と心を引きずって学校に通った。泣きながら目覚めて、必死に酸素を求めながら眠った。弱っちい自分を自覚しては、そういうわたしを殺したくなった。


そんななかでただ、登下校のときに会えるみっちゃんだけが、わたしの救いだった。

なにも考えないで、しょうもない話をしあえる。
クソくだらないことをいつまでも笑っていられる。

みっちゃんといっしょにいるときだけ、嫌なことも、こわいことも、全部忘れられた。わたしはわたしを許してあげられた。



「――奈歩、ちょっと来なさい」


そういう毎日が続いていた、ある日の朝。季節はいつの間にか夏から秋へ変わっていて、上着なしではちょっと寒いってくらいの10月の日曜に、わたしは真剣な顔のお父さんに呼ばれた。


「いつまで意地張ってるつもりなんだ?」

「……なにが?」

「お母さんとのことだ」


ウチの両親は本当に仲が良い。結婚してもう20年近くたつみたいだけど、いまだに“恋愛”してるなあって、娘から見てても思うくらい。

特にお父さんのほうがお母さんのことを大好きで、お母さんもそれをウザイだとかなんだとか言いながらまんざらでもない感じで。仲のいい両親に育てられてわたしは本当に幸せだと思う。お父さんがお母さんをなにより大切にしているし、お母さんもお父さんの愚痴は言っても悪口を言わないから。

おかげで娘は母にも父にも偏らず、家族3人、ノエルとマカロンも入れて5人で、ウチは文句なしに円満だ。


「奈歩も自分が悪いってことはわかってるんだろう? お母さん、毎日キツそうだよ」


それでも、お父さんって娘より妻な男だから、こういうときはちょっとやだなあ。