ミキがどういう経緯でこのことを知ったのかはわからない。もしかしたら先週、新学期はじめにあった文化祭でなにかあったのかもしれない。そういえばそのあたりからミキの機嫌があまりよくなかった。
わたし以外にもナミと畑山くんのことを知っている人がいて、ミキになんらかのかたちで伝わったのか。それともミキ自身でなにかを見てしまったのか。
わからないし、聞きたいとも思わないけど、ミキの性格からして前者のほうがありそうだな。後者だったらその場でぶちぎれていると思うから。
「もうアンタとは友達でもなんでもないから」
「ミキっ……」
「ダイキも、アンタにあげるよ。ウチのこと騙してたふたりで楽しく恋人ごっこしてれば?」
あんなに、いっしょにいたのにね。
放課後みんなでラーメン食べに行ったのにね。
3人そろってプールの授業サボったのにね。
先生に「3バカ」って言われて、ウルセェって言い返してたのにね。
プリクラも、写メも、たくさん撮ったのにね。
そのなかのわたしたちはどれも、バカみたいに、心から、笑っているのにね。
大事に思っているものは、みんな壊れて、消えてしまう。
あっけなく。夢のように。
こんなふうに。
「――奈歩はどうする?」
心臓がどきりと鳴った。
「どうする?」
ミキの感情のない瞳がわたしを見据える。そのななめ下で、ナミがすがるようにわたしを見上げていた。
わたしはふたりの顔を交互に見ながら、いますぐ消えちゃいたい気持ちになった。
「奈歩は、ウチらのこと騙してた、ナミの味方すんの?」
「それは……」
「奈歩まで、ウチのこと裏切んの?」
ごめんね、ミキもナミも、本当に謝らないといけないのはわたしかもしれないのに。
だって、いちばんふたりを裏切っているのは、きっとわたしだ。
知ってたんだ。ナミと畑山くんのこと。知ってて、こわくて、面倒で、黙ってたんだ。知らないふりをして、いままでなんでもなく笑ってたんだ。
きっとずっと、わたしがいちばん卑怯で、臆病で、裏切り者だった。
そして泣きじゃくるナミを置いて教室を出たわたしは、やっぱりどうにも救えない、悪魔だ。



