しょうちゃんは年に2回、お正月とお盆の数日間だけ、思い出したようにふらりと帰ってくる。そしてなぜか決まってそのうちのまるまる1日をわたしにくれる。
日付は完全に指定されるけど。
待ち合わせ時間なんかあってないようなものだけど。
それでもノコノコ、毎回アホ面下げて会いに来てしまうのは、しょうちゃんという太陽から限りないエネルギーをもらうためだ。
「――入るか?」
さっきからドーナツ屋をチラチラ見ていたのがバレていたらしい。しょうちゃんって絵に描いたような天上天下唯我独尊のくせに、意外とこういうところをちゃんと見てくれてるよなあ。
わたしがウンと答える前にずかずか歩きだした広い背中を、なんともむずがゆい気持ちで追いかけた。
見るたびに大きくなっている。タテもヨコも厚さも。どんどん、高校球児になっている。
野球、どんな感じなんだろう。先輩たちが引退して、いよいよこの夏からはしょうちゃんたちがメインの代だね。
先輩たちは地区大会の準々決勝で負けてしまった。案外マメなしょうちゃんは試合が終わるといつも結果をメールで報告してくれて、準々決勝のときもそうだったのだけど、ケータイで速報を見ているわたしは実は試合終了と同時に勝敗を知っていた。でも、メールがこなくなるのは絶対に嫌なので、『知ってるよ』なんてシラけたことは言ったりしない。
負けたって報告をくれたとき、しょうちゃんはほんとにくやしそうだった。文面だけでそれが痛いほど伝わってきた。これで先輩たちと野球するのも終わりだっていうさみしさも、いっしょに感じた。
先輩たち、残念だったね。大阪大会のベスト8に残れるのだからなかなかのチームだったはず。
「おれ、サードに転向するかも」
シトラスのスパークリングジュースをストローで吸いこんだしょうちゃんが、丸いテーブルの向こう側でぽつりとつぶやいた。