お母さんと喧嘩した。
発端は夏休み前の三者懇談だった。担任に数学の成績についてつっこまれてしまったのだ。このままだったらほんとに進級危ういぞって、けっこう真剣な面もちで言われた。
8点だもん。みっちゃんに手伝ってもらって、いくら再試で100点をとったって、本試でそんなスコアをたたき出してしまっているようなやつは進学校ではアウトってわけらしい。
家に帰ってくるなりいろいろ言われた。そりゃあもう数えきれないほどの小言の刃が全身めがけてビュンビュン飛んできた。
もうちょっとがんばってもいいんじゃない? 奈歩ってまじめに勉強してる? 家に帰ってきてもノエルとマカロンと遊んで寝てるだけじゃない? 学校では? ちゃんと授業受けてる? 大丈夫なの? 来年は受験生だよ?
あんまりにもしつこすぎて、わたしはやってしまった。
うるっさいなあ! ――と、言ってしまったのだった。
そこから、止まらなくなったわたしの怒涛の反撃。
まじめにやってるよ、できることはやってるつもりだよ、わたしだって好きでバカなわけじゃない、大学に行かなくたってオーストリアには行ける、大学も出てないお母さんになにがわかんの?
そしてきわめつけは、
「お母さんに尊敬できるところなんかひとつもないよ!」
……ほんとに、最低なことを言ったと思う。
あれから1か月、お母さんとあまり口をきいてない。
家のなかピリピリして、普段から気の小さいお父さんに、もう胃に穴あくんじゃないかってくらい気を遣わせて。お父さんはノエルとマカロンにばかり話しかけているよ。
謝罪はわたしが先にするべきだ。そんなことわかってる。
あんな最低なことを言ってしまったのは、図星を突かれて、恥ずかしくて、むかついて、ついカッとなってしまったからだ。自分が悪いってことを痛いくらいわかっていたからだ。
もっとまじめにやろうと思えば、ぜんぜんできるんだ、勉強。理由をつくってめんどいことから逃げているだけ。
わたしが悪い。
でも、いつもは友達みたいに仲良くしているお母さんに、いかにも母親っぽいことを言われたのが、なんだかものすごいショックだった。
お母さんなら、わたしの気持ち、わかってくれると思ってた。逃げてばかりのバカな娘のこと、まるっと認めて、受け入れてくれるはずだって信じてた。
だからショック。
最低だ。わたしは、ほんとに、最低な娘だ。