わたしは黙ってうどんをすすった。羽月も思い出したようにやっと食べ始めて、しばらく無言の時間が続いた。


しんどいなあ。ワタッチとキョウヘイもそうだけど、羽月とか、ほかの部員たちが。

学校中の変わり者と問題児だけを寄せ集めたような、うるさくてカオスな部だけど、なんだかんだみんな仲良くやってたもんね。外から見てもわかるくらい、時に近寄りがたいってほどに。

それが、たったひとりの女子のせいで、いまにも崩れようとしているのか……。

なにごとも無常なのかね。やってらんないね。悲しいよ。だって、秋山さんって、野球部にはなんの関係もない、言っちゃえば“部外者”なわけじゃんね。

たかだか高校生どうしの恋愛ごときで。わたしも同じ高校生だけど。でも、16歳やそこらで始まった恋愛が一生ものになることなんか、たぶんほとんどないしね。


みんなもっと真剣に、青春かけて野球してるんだと思ってた。

それとも秋山さんってそんなにハマる子?


「奈歩、どうしたらいいと思う?」


わたしよりあとから食べ始めたくせに、わたしより早く食べ終えた羽月が、すがるような瞳を向けてきた。


「わかんないよ、そんなの、わたしに聞かれたって……」


むしろこっちが聞きたいくらいだ。ナミがミキの彼氏と浮気してるっぽいんだけど、どうしたらいいと思う?


「羽月にも、わたしにも、できることなんかないでしょ」


なかば投げやりに、わたしは言った。