熊本城ってやつは白くてデカくて強かった。地元のお城とはぜんぜん違う。こんなことを言ったらきっと斎藤道三に怒られてしまう。

地上でのクラス写真の撮影で疲れきって、天守閣にはヒィヒィ言いながら上った。下りるときはさすがにもううんざり、かんべんしてくれって思ったけど、下りなきゃどうにも帰れない。

現役バスケ部のミキと、モデルのように脚の長いナミが軽快に階段を下りていくのを、わたしもひょいひょいと追いかけた。いっしょに涼しい顔して笑ってたけどわりとキツかったよ。ふくらはぎがパンパン。あしたは間違いなく筋肉痛だろうな。まだ16歳のはずなんだけどな。なんか部活やっとけばよかったなあ。


急すぎる永遠の階段を下りきって、由緒ある木造の建物を出ると、いきなり視界が開けた。明るい。まぶしいくらい。

その白い光のなかに、ひょろりと、みっちゃんが立っているのが見えた。だんだん目が慣れてくる。みっちゃんは仲間とだべっていた。水樹くんもいっしょだ。


「みっちゃん!」


思わず声が出る。みっちゃんが視界に入ったとたん、みっちゃんと呼んでしまうことは、もう完全な反射運動になってしまっている。

ミキとナミは察したように笑うと、また連絡してと、ちょっとかわいこぶったように言った。

普段めちゃめちゃに冷やかしてくるくせに、みっちゃんの前ではいい子ちゃんの顔するんだもんなあ。おかげでみっちゃん、ミキとナミのことをすげえいい子だって評価してるんだ。騙されてるよ。心配だ。


「奈歩」


こっちに気付くと、みっちゃんは大きめの前歯を見せて笑った。そして目は覚めたのかと聞いた。べつに寝てないしィと、わたしはおどけて答える。みっちゃんはもっと大きく口をあけて笑う。