◇◇


新幹線に2時間半よりも長く乗ったのははじめてだった。ついでに広島より西へ行ったことも、はじめてだ。

ミキとナミと時速300キロの部屋でお菓子を食い散らかしながら、やっと博多駅に到着したときにはもう、お昼を大きくまわっていた。


「でもやっぱ、北海道か沖縄がよかったなぁ」


ウーンと伸びをしながら、ミキが不満げに言った。


「移動も飛行機がよかったよね」

「そういや、キタ高は石垣島だってね?」


ぞろぞろと駅のホームに流れだす黒いかたまりの一部を構成しながら、せっかくの修学旅行に対する文句をこぼしあう。

あーあ、どうしてウチらだけが“九州”なんだよ?
隣の高校は沖縄だし、ヨシダの高校は北海道だって聞いてる。近くの高校ではウチだけが九州だって。

べつに嫌ってわけじゃないけどさ。列島のまんなかにいるんだから、どうせなら、わたしたちももう少し遠い場所へ行きたかったってだけ。それこそ、空路じゃないとなかなか行けない、北の大地や南の離島へ。


それでも、はじめての福岡は新鮮で、けっこう楽しかった。食べるものは全部おいしかったし、店のおっちゃんやおばちゃんはみんな独特のなまりがあって、話してておもしろかったし。

なんだ、九州でよかったじゃん、逆にね、なんて言いながら、3泊4日の旅行のうちの初日の夜は更けていった。