水樹くんはずっとニコニコしていた。
容姿はどちらかというとインドア派、素朴な好青年って感じなのに、彼の放つオーラは活発で強い感じ。わたしに興味津々でしょうがないってのを隠そうともしないんだな。いい人なのかヤな人なのかさっぱりわかんない。
「川野さんはミツにべったりだね」
少し厚いくちびるがからかうように言った。ヤな人のほうへ少し針が振れた。
「えー。ダメなの?」
同じように軽く笑って答える。わたしなりの牽制のつもりだった。
「ああ、ごめん。嫌な意味で言ったわけじゃないよ」
取り繕うように、水樹くんは少しトーンを落として言った。
「ただ川野さん、理系のほうでは完全に『光村の女』って認識だからなあ。そこんとこ実際どうなのかなって、ちょっと興味あっただけなんだ。気にさわったならごめんね」
眉を下げながら、素直にゴメンと言ってくれた水樹くんは、べつにヤな人ではないのかも。なによりみっちゃんの友達だしね。
でもやっぱりどこか飄々としてるよ。感じる。みっちゃんとはまた違う、涼しさ、冷たさ。それとも理系の男子ってみんなこう?
「『光村の女』って、なんか極道の妻みたいじゃん」
「わはは、極道って! 川野さんっておもしれえね?」
今度はみっちゃんに向かって言った。みっちゃんはわたしをちらりと見て笑い、そして、そうだよって、ちょっとおかしな返事をした。
「まあ頭はビックリするほど悪いけど」
うるせえ、バカ。図星だから言い返せないじゃん。
新学期はじめにあった課題テストがそりゃあもうぼろぼろだったこと、みっちゃんに言わなきゃよかった。