だらだら掃除をしていた。ミキとナミとわたし、1年のころとまったく変わらないメンツ。掃除してるのかしゃべってるのかわからない。
みんなそろってクラスが同じになるなんて思っていなかったので、ついこないだ、始業式の日は3人で抱きあったっけ。仲良しどうしはなるだけ同じクラスにしているんだって聞いた。高校のこういう太っ腹なシステム、いいな。中学では考えらんなかった。
「奈歩はさ、なんで、光村クンと付き合わないの?」
モップにあごを預けながら、ミキが唐突に言った。掃除があんまり退屈だからそろそろおもしろい話題が欲しいって顔をしてる。
「あ、それ、ウチもずっと思ってたんだって」
ナミが応戦するように乗っかる。
ふたりはなんともいえない期待のようなものを込めた目でわたしを見つめていた。そんなふうにニヤニヤされても、とっておきの答えなんかぜんぜん思いつかないよ。困った。
「なんでって、だって、みっちゃんはそういうんじゃないしさ」
いかにもありきたりな、しょうもない返事。ふたりの表情から期待が消えて、かわりにあからさまなガッカリが浮かびあがる。わたしもガッカリだ。自分に。
「でもエッチはしてるんでしょ?」
なかなか清楚ぶった見た目をしているくせに、ナミはこういう話題をためらいもなく口に出す。同時にミキが大声を上げて笑った。
べつにわたしだっていまさら純情ぶるつもりはないけど、みっちゃんのことでこういう下世話なの、ちょっとやだな。いつもきれいに保っている場所を土足で踏み荒らされてる気分。
「するわけないじゃん」
少し強い声で言った。ふたりは冗談だってふうに笑った。
「ねえ、ほんとなんだってば」
男と女の距離がちょっとでも近づくと、恋愛関係、もしくは割りきった肉体関係に決めつけられがちなの、なんでだろうね。それ以外の男女のあり方ってのはないのかね?
本能レベルでそうできているんだからもうしょうがないのかな。味気ない世界だ。