メッセージヲ、サイセイシマス――
女性がぞっとするほど無機質にしゃべったあと、聞こえてきたのは、よく知っている声だった。ちょっとクセのある関西弁。お母さんのお兄さん――わたしがよくなついている、伯父の声。
でも、まるっきり知らない他人みたいだった。この小さな機械を通した向こう側でしゃべっているのは、伯父さんとは違う、なにかだ。
金を、よこせと。要約すると、伯父のような人はそんなことを言っていた。
わたしが8歳のとき、おじいちゃんが死んだのだけど、そのとき兄妹で半分ずつ分け合った遺産をよこせだって。オカンの面倒を見てるのは俺なんだから当然だろうと。
それを拒否するなら、お父さんやわたしを含め、ウチとはいっさいの縁を切ると。
お母さんは、そのことで最近揉めていたんだと、涙をこらえきれずに言った。
遺産相続のとき、実はお母さんは、その半分のお金を受け取ることを拒否したらしい。おばあちゃんを伯父さんが引き取ってくれるんだから、ウチはいらないって。
でも、それを止めたのはほかでもない伯父さんだったって。俺たちはオヤジの子どもなんだから、与えられたものを平等に分け合うのは当然だ、受け取らないなんて故人に失礼だろうと。
なのに、8年たったいまになって、そんなふうに連絡をしてきて……。
お金は、人を変えてしまうんだね。人を悪魔にする力をもってる。
知らなかった。知らなかった。ぜんぜん、知らなかった。
そんなふうに大人たちが揉めていたことも。
優しかった伯父さんが悪魔だったことも。
世界がこんなに汚いってことも。
お金なんて、あるものがないものに与えたらいいじゃない。そういうものじゃないの? そうじゃないの? また違う問題があるの?
もしかして、わたしがいま進学校に通っていて、大学進学のためにお金がかかるから、お母さんは伯父さんにお金をあげなかったの?
だから、こんなことになってしまったの?