◇◇
崩壊という非日常は突然やってくることがある。完璧に約束された当たり前なんかないってこと、知っていたけど、わたしはすっかり忘れていたんだ。
半年前に買い替えた、小さい固定電話の前で、お母さんが静かに泣いていた。隣で、お父さんがむずかしい顔をしていた。
昼前にやっと起きてきた、低血圧すぎるわたしの起き抜けの頭じゃ、ぜんぜん状況がわかんなかった。
どうしたんだろう? 普段は笑ってるか怒ってるかしかないお母さんの涙は、もしかしたらはじめて見るかもしれない。気の小さい、優しいお父さんが眉間に皺を寄せているの、めずらしい。
どうしたの?
きょうは日曜日で、学校もなくて、昼過ぎからみっちゃんとデートで、デートっていうのも、きょうが3月14日、ホワイトデーだからで。こんなにハッピーな日に、ふたりはどうして、そんな顔をしているわけ?
「おはよう」
でも疑問は言葉にならなかった。なんて言ったらいいのかわからなかったんだ。
こういうとき、人が悲しんだり怒ったりしているとき、いつもどうしてもためらってしまうのは悪い癖だ。その相手が肉親でも、親友でも、恋人でも、どうでもいい他人でも、わたしはダメだね。
なんて言おう?
わたしが踏みこんでもいいことかな?
うまい言葉をかけられるかな?
やっぱりきょうも頭でっかちにいろいろ考えてしまって、そうしてわたしの口をついて出たのは、びっくりするくらい場違いな声、言葉だった。
うんざりする。両親が深刻そうな顔しているのに、のんきな朝の挨拶って、バカじゃないの。
はっとしたように顔を上げたふたりがこっちを振り返って、取り繕うように笑った。おはよう、だってさ。キモチワリィ笑顔だ。
崩壊という非日常は突然やってくることがある。完璧に約束された当たり前なんかないってこと、知っていたけど、わたしはすっかり忘れていたんだ。
半年前に買い替えた、小さい固定電話の前で、お母さんが静かに泣いていた。隣で、お父さんがむずかしい顔をしていた。
昼前にやっと起きてきた、低血圧すぎるわたしの起き抜けの頭じゃ、ぜんぜん状況がわかんなかった。
どうしたんだろう? 普段は笑ってるか怒ってるかしかないお母さんの涙は、もしかしたらはじめて見るかもしれない。気の小さい、優しいお父さんが眉間に皺を寄せているの、めずらしい。
どうしたの?
きょうは日曜日で、学校もなくて、昼過ぎからみっちゃんとデートで、デートっていうのも、きょうが3月14日、ホワイトデーだからで。こんなにハッピーな日に、ふたりはどうして、そんな顔をしているわけ?
「おはよう」
でも疑問は言葉にならなかった。なんて言ったらいいのかわからなかったんだ。
こういうとき、人が悲しんだり怒ったりしているとき、いつもどうしてもためらってしまうのは悪い癖だ。その相手が肉親でも、親友でも、恋人でも、どうでもいい他人でも、わたしはダメだね。
なんて言おう?
わたしが踏みこんでもいいことかな?
うまい言葉をかけられるかな?
やっぱりきょうも頭でっかちにいろいろ考えてしまって、そうしてわたしの口をついて出たのは、びっくりするくらい場違いな声、言葉だった。
うんざりする。両親が深刻そうな顔しているのに、のんきな朝の挨拶って、バカじゃないの。
はっとしたように顔を上げたふたりがこっちを振り返って、取り繕うように笑った。おはよう、だってさ。キモチワリィ笑顔だ。