しょうちゃんは、ヨシダのチームメイトだったのだ。わたしが中3のころに付き合っていた、羽月に理不尽に嫌われていた、あのヨシダ。

しょうちゃんとヨシダは、中学の野球部には入らず、市のクラブチームに所属していた。いろんな学校、いろんな学年の、実力をもった野球少年たちが集まっているなかで、ふたりは9分の2のレギュラーを張っていた。

ヨシダはライト。そしてしょうちゃんは、チームの要、キャッチャーだった。


その日――しょうちゃんに出会った日、わたしはライトのポジションを守る彼氏の試合を見に行ったんだ。そして試合後、キャッチャーミットをかぶったままの少年に声をかけられた。


――おまえがヨシダの女?


笑っちゃったね。中学生の男の子が『オンナ』なんて、いったいどこで覚えてきたんだよ?

でも、なぜか嫌な気はしなかった。しょうちゃんはなんかそういう男なんだ。悪びれもせず、屈託なく、無邪気に人との距離を詰めてくる。

キャッチャーミットを外して笑った彼の表情、わたしは死ぬまで忘れらんないだろうって思うよ。

圧倒的な強さとまぶしさ。しょうちゃんはやっぱり、真夏の日差しだ。



「みっちゃんは、しょうちゃんとは中3で同じクラスだったんだっけね?」

「そう。中学のときは松田からけっこう奈歩の話聞かされてたよ」

「嘘でしょ!」


みっちゃんは嘘だとも本当だとも答えず軽快に笑うだけ。


「だからかな。奈歩に会ったとき、なぜかはじめて顔を見る気がしなかったんだよな。すごいなつかしいみたいな……よく知ってる古い友人に再会できたような、なんか不思議な気持ちになったんだ、おれ」


頭のいい人ってのは、紡ぐ言葉も洗練されている。