白襟がトレードマークのセーラー服をハンガーにかける。制服は、窮屈だからたしかに嫌いなんだけど、デザインはとても気に入っている。
本当になんでもない、紺色地に白襟、黒いスカーフの制服。それでも街なかで目立つこのセーラー服に、中学のころからあこがれていて、ずっとこれを着たいって思っていた。高校は、6割くらいは制服で決めたと思う。
中学もセーラーだったから、本当はちょっとブレザーも着たかったんだけど……。
眉毛ぎりぎりで揃えた前髪で立派なちょんまげをつくる。下はピンク色のスウェットに、上は好きなロックバンドのライブパーカーを着た。ちなみに下着は制服といっしょに脱ぎ捨てた。
我ながら最高にだらしない、ダッセェおうちスタイルでダイニングへ向かうと、やっぱり白と赤の2匹が足にじゃれついてくる。
「ねえお母さん、聞いてよ」
まるい皿の上で輝く白いふくらみに茶色のベールをかけている最中のお母さんは、せわしなく食卓をつくりながらも返事をしてくれた。
「きょう、こないだの再試が返ってきたんだけどね」
「ああ、あれね。どうだったの?」
あきれた笑い声。まだ高校に入学して1年もたっていないのに、もう娘の再試になんかすっかり慣れてしまったって感じ。
中学のころはなまじ優秀と呼ばれる部類の生徒だったから本当はガッカリもしているんだろうけど、そういうのを見せないお母さんにはいつも感謝している。ありがとう、ごめんね。
「100点だったよ」
フフンと鼻を鳴らすわたしに、お母さんも同じように鼻を鳴らした。
「嘘でしょう? 本当は何点だったの?」
「もう、本当だってば!」
少しは娘の言うことを信用してくれたっていいじゃん。
「みっちゃんに、教えてもらったんだ」
自分で言っておきながら、ちょっと震えた。
なにか重要な秘密を打ち明けているような感覚になったのだ。