みっちゃんを手放したら、わたしは死んでしまうんだと思っていた。

サカナが水なしでは生きていけないように。
ヒトが酸素なしでは生きていけないように。

わたしは、みっちゃんがいなくては生きていけないんだって、ずっと信じていたよ。


でも、死なない。

死ななかった。

わたしは、みっちゃんがいなくても、生きていけるんだ。


みっちゃんを失ったことが、さみしい。

みっちゃんを失っても生きていける自分が、さみしい。



――いつか、


もう少しして、前髪を伸ばして、腰まであるこの髪を肩より上のラインで切るときも。

ふたりでいっしょに読んでいた野球漫画がいきなり完結してしまうときも。

アメリカの大統領が信じられない男に変わるときも。


これから迎えるどんな未来にだって、みっちゃんは、いないんだね。


わたしは、みっちゃんのいない世界で、みっちゃんのいない人生を、歩んでいくのだ。みっちゃんは、わたしのいない人生を、歩んでいくのだ。

たったそれだけ。

たったそれだけが、こんなにも、さみしい。

さみしくて、苦しい。

こんなにも空っぽなのに、苦しくてしょうがない。


それでも、それでも、空っぽなぶんだけ、たくさんの希望を詰めこんでゆける。

大切なみっちゃんを失った向こうで、弱かったわたしは、自分の力だけできらめいてゆける。


みっちゃんもそう信じてくれていたら、すごく、うれしいよ。

それだけでひとつ、新しい輝きを手に入れられたような気がする。