直に聴きたい、と思った。みっちゃんの生きている音を感じたい。
もうひとつの手のひらを伸ばす。両手がみっちゃんの肩甲骨に触れる。ホネホネした身体。太れないって嘆いていたけど、みっちゃんの主張のない薄っぺらい身体が、わたしは好きだよ。どこにだって飛んでいけそうで。
とく、とく、とく。一定のリズムが鼓膜をノックする。血液の流れる音がごうっと耳にこもる。
ああ、生きているね、みっちゃん。
生きているみっちゃんを、わたしはこんなにもいとしく思う。
「大好きだよ」
心臓に直接語りかけるように言った。みっちゃんは、わたしのダイスキを、いつもどういう気持ちで聞いているんだろう。
「知ってる」
みっちゃんは変わらない声でそう言ったけど、ひとつだけ違うことがあった。
みっちゃんの両腕が、わたしを抱きしめている。意思を持って、温もりを分けてくれている。
こんなことははじめてだった。わたしがみっちゃんに触れることはあっても、逆は一度もなかった。
「……“最後”だから」
みっちゃんは涼しいとばかり思っていたよ。こんなにもあったかい、熱いほどの男の子だなんて、知らなかった。知ろうともしていなかった。
わたしたちは無言で抱きあった。月の出ていない星明りの夜の下、互いの存在だけを感じていた。
ああ、これからなにを忘れても、いつかおばあちゃんになって、みっちゃんという存在じたいを忘れてしまったとしても、この夜のことだけは永遠に覚えていたい。
「みっちゃん。みっちゃん」
忘れたくない。忘れたくない。
みっちゃんのこと、みっちゃんにもらった大切なもの、忘れたくない。
絶対に、忘れない。