「……会わない、って」


みっちゃんがおそるおそる言う。地球がゆっくりとまわりだす。


「一生。二度と。死ぬまで。……どれが、いちばんわかりやすいかな」


悲しい顔を、してくれるんだね。いつもからから笑うだけのみっちゃんだったから、そういう表情を見るのははじめてで、胸がぎゅっとする。つぶれそうだよ。


「みっちゃんは、わたしみたいなのに振りまわされていい男の子じゃない」


花純ちゃんに言ったことをそのまま、今度は本人にぶつけてみた。みっちゃんの顔は見られない。涼しい男子の、悲しい顔は見たくない。


「高校の3年間っていう、すごく大切な時間をいっしょにいてくれてありがとう。……ごめんね。わたしみたいなのにその優しさを使わせて、ほんとうに」

「なんでそんなふうに言うんだよ?」


ちっともさらっとしてない声に、びくっとした。


「奈歩にそんなこと言われたら、おれの3年間ってどうなるんだよ? なんになるんだよ? ……おれが最高に楽しかった時間を、奈歩だけは、そんなふうに言うな」


泣いてしまう。

ごめんなさいと、ごめんなさいと、ごめんなさいと。ありがとうと。それから、大好きと。全部が胸のなかで渦を巻いて、心をぐしゃぐしゃに濡らしていく。それだけでは追っつかなくて、とうとう両目からあふれだす。


50センチ先にある胸に手を伸ばした。そっと触れる。みっちゃんの鼓動の音を、手のひらのまんなかで感じる。

とく、とく、とく。みっちゃんの心臓は、こんな夜にも軽快なリズムを刻んでいる。