もしかしたら、まだまだあるのかな?
忘れかけている記憶。もしかしたら、もう忘れてしまっている記憶。死ぬまで二度と思い出さない記憶。
こんなに大切に思っているのに、こんなふうに、いつか心のなかから消え去ってしまうのかもしれない。みっちゃんとの思い出。かけがえのない時間を。
「いつまで寝っ転がってんだよ」
逆さまのみっちゃんがわたしの顔を覗きこんだ。177センチ先にある顔を見て、情けないことに、さみしさばかりがこみ上がってくるよ。
「みっちゃん、大好きだよ」
わたしは言った。心に刻みこむように、大切に言った。
みっちゃんが息を吐いて笑う。
「知ってるよ」
「大好きだよ」
「うん」
「ずっと、大好きだよ」
「うん」
「ねえ、みっちゃん」
「うん?」
「だからもう、会わない」
みっちゃんはウンと言わなかった。
時間が止まる。星がまたたくのをやめる。まわらなくなった地球の上で、わたしはのっそりと上半身を持ち上げた。みっちゃんは下半身を地面にくっつけた。
177センチの高低差があったわたしたちの目線は、15センチに縮まった。