どういうふうに、なんて聞かれても、うまく答えられないからこの質問は嫌いなんだ。


「家族……みたいに」


震える声でわたしは言う。これじゃ自信ないのがまるわかりだ。

羽月はいらついたようにサンダルで地面を一度こすった。


「でも、奈歩とミッツは家族じゃない。親子じゃない。きょうだいじゃない。夫婦じゃない。『いつか結婚するから家族になる』? ねえ、そういう約束は、好きあってる男女がするものだよ」

「わかってる」


わかってるよ。
みっちゃん大好き、結婚しようね――わたしはきっと、誰も幸せにならない呪文を唱え続けている。

でも、こうする以外に、みっちゃんを失わない方法が思いつかなかった。

こわいことだらけの世界で、こわいことなんかひとつもないと涼しく言ったみっちゃんを、失いたくなかった。


でも、知っている。

大事なものはいつかすっかり消えてしまうということ。

わたしは、知っている。


「それでも、どうしても失くすわけにはいかないんだよ。みっちゃんはわたしの強さそのものなの」

「違う」

「違わない」

「違うっ。ミッツは……ミッツは奈歩の、弱さそのものだよ」


羽月はほとんど泣いていた。それを認識するのといっしょに、自分の頬が濡れていることに気付いた。


「奈歩は、ミッツを失くしても、だいじょうぶなんだよ」


ほんとかな?
大丈夫かな?

おじいちゃんを失って、伯父さんを失って、ミキとナミを失って、しょうちゃんを失って……。

みっちゃんまでいなくなったら、今度こそダメなんじゃないかな?


「だって、奈歩にはいろんな宝物があるじゃん」


そうだ。それでも手元に残ったものはある。

そうして、そのすべてといっしょに、わたしは生きている。


「それでね、まさに奈歩が、あたしにとっては宝物なの」


羽月がわたしを抱きしめた。いままで感じたことのないようなやわらかい温もりに包まれて、いよいよ涙が止まらなくなってしまった。


「奈歩、ほんとうはミッツのこと解放してあげたいって思ってるんだよね?」


そうだよ。わたし、ほんとはわかっていた。このままじゃダメだってこと、わかっていた。見ないふりをしていただけだった。

ほんとうはわたし、世界でいちばん大切なみっちゃんに、世界でいちばん幸せになってほしいと思ってるの。