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例年より少し遅い日程、1月19日と20日とで行われたセンター試験の両日とも、雪は降ったが積もらなかった。泣きたくなるほどの寒さのなかでわたしたちは闘った。鉛筆を剣に。消しゴムを盾に。

たった18年だと言われそうだけど、それでも人生最大の戦争を終えたというのに、ぜんぜん気持ちは晴れない。まだ2次試験が残っているからかな。



「奈歩ちゃん、ちょっといい?」


センター明けから自由登校となったせいで、クラスの半分ほどしか座席は埋まっていない。卒業まであと1か月しかないのにけっこうみんなドライなんだな、と思いつつ、わたしも学校に来るのは3日ぶりだ。

3日ぶりに姿を現したわたしを、わざわざ呼び止めたのは花純ちゃんだった。


「うん。いいよ、なにー?」


赤本をやったり、友達としゃべったり。みんなが思い思いに過ごしている教室の外に連れ出されたのには、ちょっとびびった。

どうしたのー、と軽く聞けないくらいにはむずかしい顔をしている花純ちゃんにもびびった。

ほんとにどうしたのかな? もしかしてけっこう真剣な話かな?


「光村くんが志望校のランクをひとつ落としたの、知ってるよね?」


廊下に出るなり、花純ちゃんは間髪入れずにそう言った。突然出てきたみっちゃんの名前にまたびびる。


センター試験という闘いに勝ったのか、と聞かれたら、たぶん、負けた。国公立に行くつもりならレベルを下げろと大川先生に言われるくらいには惨敗だった。

そしてそれは、みっちゃんも同じだった。

N大を受けるはずだったみっちゃんから「志望校を落とすよ」と言われたのは先週のこと。センター試験の翌日。驚いてかたまってしまったわたしに、みっちゃんは、C判定は少しこわい、とガラじゃないことを言った。