1年1組と1年7組の下駄箱はちょっと遠い。端っこの教室どうしなのでしょうがない。

7組の下駄箱の前でキタキツネを待ち伏せしているあいだ、いろんな人にじろじろ見られたし、わたしも見返した。コッチ側の下駄箱にはほとんど知り合いがいないのだ。

開け放っている窓の向こうから冷たい風がびゅうっと何度も吹き抜けてくる。信じられないほど寒い。寒いっていうか冷たい、冷たいっていうか痛い。3回折り曲げたうえベルトでグッと上げているスカートを、もうダッセェ丈に戻しちゃおうかと血迷う。


何度目かの北風と闘っているとき、ぽこんと名前を呼ばれた。奈歩。ちょっと鼻にかかった、男子にしては少し高い声。


「みっちゃん!」


ああ、みっちゃんの顔を見るたびに、みっちゃんの名前を呼ぶたびに、バカみたいに顔がふやけちゃうの嫌だなあ。


「掃除長引いてた、ごめん」


掃除当番だったなら最初にそう言っといてほしかったよ。でも、ぜんぜん悪いなんて思ってない感じで、みっちゃんは切れ長の目をさらに細めて謝った。さらっとしたこういう態度がいい。


「やばいよ、寒いよ、みっちゃん、死ぬかもしんない」

「そんなに脚出してるからだろ」


それは、しょうがないじゃん。女子高生だもん。スカートを短くするのはわたしたちの宿命なのだ。まあ、誰に決められたわけでもないんだけど。やりたくてやってるだけ。

みっちゃんはいいよね。男子だから当たり前に長ズボンの学生服を着られるし、そりゃあったかいに決まっている。

そのうえ黒のダッフルコートにマフラー、どんぐりみたいな黒いニット帽をかぶっている背の高い男が、どうにもむかついた。みっちゃんがニット帽なんかかぶってるとこ、はじめて見た。

今朝かぶっていたっけな……と考えている途中で、今朝はめずらしく羽月といっしょに登校したことを思い出す。わたしのなかにはもう完璧に、みっちゃんとの登下校の習慣が染みついている。