戻ってきたわたしに笑ってくれたみっちゃんはいつもどおりで、なんとなくほっとした。
みっちゃんだけが、ずっと変わらない。そう感じているけど、それは単なるわたしの願望かもしれない。
夕食をドーナツのみで済ませていたみっちゃんがいろいろ買うのをひとくちずつもらいながら、新しい年がくるのを待っていた。たった4時間前まではなにも変わらないと思っていた宇宙が、1秒ごとに特別な色を見せていく。
ふだんなら紅白歌合戦を見ながら、暖房のきいた家のなかでだらだらと過ごす夜。
一歩外に出ればこんなにも神聖な時間が流れていることを、18年目で、はじめて知った。
「松田に、聞いた?」
アメリカンドッグをぺろりと平らげたみっちゃんが、思い出したように言った。
「さっきそのこと話してたんだよな? 松田のお母さんが亡くなったって」
「え……?」
ぴかぴかと輝いているあの星たちが全部落っこちてきたのかと思った。
落っこちてくればいいと思った。落っこちてきてほしい。そうして、いまわたしが立っている地面ごと、粉々に砕いてほしい。
みっちゃんはかまわず話を続ける。
亡くなったのは先月の頭だったこと。それでしょうちゃんがコッチに帰ってきていたこと。まわりには極力、お母さんのことは隠していること。
あいつも大変だったんだな、と言ったあとで、みっちゃんはやっとわたしの顔面が蒼白していることに気付いたらしい。
「……奈歩?」
どうしてわたしはいつもこうなんだろう。こんなふうに、いちばん大切なときに、間違えてしまうんだろう。