「まあおれも今回は会ってないんだけど」


どんな顔をすればいいのかわからないから、あまりしょうちゃんの話はしたくないな。

こんなふうに思うようになったのはいつからだろ。前はしょうちゃんの話をしているだけでやたらに、お手軽に、幸せを感じられていたのにな。

わたしはもう、しょうちゃんに恋をしていないのかな。

そう思うと、さみしい。さみしい、とても。

大切にしてきたものをひとつ失ってしまったみたいだ。


「……あれ」


言霊って、あると思う。

噂をすればなんとやら、ということわざを生みだした人をうらむよ。そうだよ、これだから多少スピリチュアルなものを信じてしまうんだ。

増えてきた明かりと、人の波のなかに、みっちゃんとわたしを引き合わせたその人はいた。


「ミツ……と、奈歩」


髪が少し伸びたね。そんなふうに思ってしまうくらいには、会っていなかったんだっけね。

しょうちゃんは地元の友人といっしょに年越しに来ていたみたいだった。彼らは同時にみっちゃんの中学時代の友人でもあるので、わたしは見事に置いてけぼりだ。


「よう」


ひとりぼっちになったわたしに、ぎこちない声がそっと寄り添った。しょうちゃんが隣にいるだけで、やっぱり、どこかあたたかいね。不思議なくらい。


「久しぶり、だね」

「だな」


あれ? わたしたちってこんなに不自然だったかな?

見たことのない濃いブラウンのダッフルを着ているしょうちゃんは、なんだか見たことのないひとみたいだ。