フードコートでだらだらとだべっているうちに、いつの間にか閉店時間がやってきていた。2時間も居座ってしまっていたみたいだ。
メリハリのない3拍子の蛍の光が流れる店内を、同じようにわたしたちもだらりと歩く。ふだんガヤガヤうるさいのが嘘みたいにどこもかしこも静まりかえっている。大晦日の夜って感じだ。
これから帰宅するのではなく、この静かな夜に出かけていくことに、わたしはささやかなときめきみたいなものを感じていた。
「補導されたらどうしよう」
「こんな日くらい世の中も大目に見てくれるだろ」
「いーや、生徒指導に会っちまったら最後だね」
ウィン、と音を立てて開いた透明のドアを2枚くぐった先には、中途半端な田舎のツンドラが待ち受けていた。うひー、寒い。思わずマフラーを口元までぐっと上げる。
ぽつぽつと明かりの灯る道はファンタジーそのものだ。こんな日のこんな時間だからか、車通りもほとんどなく、通行人もほとんどない。銀河の最果てにわたしたちふたりだけが放り出されたみたいな気分だよ。
しかしすぐに、銀河じゃないか、と思いなおした。
ここは、底なし沼だ。
みっちゃんは、その深い沼に沈みかけているわたしを引き上げてくれるひとだって思っていた。でも水樹くんには違うふうに見えていたようだった。
“共依存”――
ファンタジーは、ファンタジーのままだ。現実にはなりえない。
こんなわたしといっしょに沈んでくれる優しいひとを、このわたしこそが、押し上げてあげなければいけないのかもしれない。
「そういや、この年末年始は松田に会わねーの?」
どきっとする。どきっとしてしまったことに罪悪感を覚える。
ああ、そういえば会ってないなあ……。
久しぶりにその存在を思い出した気がすることにも、罪悪感。