◇◇
大晦日は出かける、と言ったわたしに、お父さんもお母さんも反対はしなかった。いや、最初は反対されたけど、みっちゃんの名前を出すとふたりとも拍子抜けするほどあっさり認めてくれた。
みっちゃんに会ったこともないくせに、なにが「光村くんといっしょならいいか」なんだろう。
今年最後に身にまとったのはお気に入りの青いセーター。この鮮やかな青を、コートの黒とマフラーの白で隠さなければならないこの寒さが、わたしはあまり好きじゃない。
すでにみっちゃんは待ち合わせ場所のコンビニにいた。またあのどんぐりみたいな黒のニット帽を頭のてっぺんにくっつけている。3年間ずっと、みっちゃんの頭をあっためてくれているそのどんぐりを、最近ではとても愛おしいカタチに思っている。
雑誌コーナーではなく、ドリンクコーナーで時間をつぶすみっちゃんが、いいな。
「みっちゃん」
首はあまり動かさないで、すっとした切れ長の目だけでこっちを向いたみっちゃんが、少し笑った。
「え、なになに、ミルクティー買ってくれるの?」
「奈歩は今年も最後まで図々しいな」
とか言いつつ、買ってくれちゃうんだもんなあ。
アイスの半分ほどの量しか入っていないペットボトルを優しくつかみ、レジまで持っていく背中をあわてて追いかける。さりげなくわたしのお気に入りのメーカーを選んでしまうところが、もう敵わないね。
「肉まんふたつください」
決して店員さんにタメ口をきかないみっちゃんが好きだよ。
わたしが100円玉を渡しても、笑って押し返してくるみっちゃんが好きだよ。
ペットボトルを手渡す前にキャップをゆるめてくれるみっちゃんも好きだし、肉まんはふたつともおれのってしょうもないいじわるを言うみっちゃんも、好き。
みっちゃんの好きなところ、挙げ始めたらキリがない。紙に書いて積み上げていったらきっと月にも届いてしまうくらい。大げさじゃないよ。
「みっちゃん、大好きだー!」
「はは! それ、ダイスキ納め?」
アツアツの肉まんを頬張った。きょうは記念すべき今年最後の日だっていうのに、宇宙はなにも特別な顔を見せないで、しんしんと凍えるだけだね。
大晦日は出かける、と言ったわたしに、お父さんもお母さんも反対はしなかった。いや、最初は反対されたけど、みっちゃんの名前を出すとふたりとも拍子抜けするほどあっさり認めてくれた。
みっちゃんに会ったこともないくせに、なにが「光村くんといっしょならいいか」なんだろう。
今年最後に身にまとったのはお気に入りの青いセーター。この鮮やかな青を、コートの黒とマフラーの白で隠さなければならないこの寒さが、わたしはあまり好きじゃない。
すでにみっちゃんは待ち合わせ場所のコンビニにいた。またあのどんぐりみたいな黒のニット帽を頭のてっぺんにくっつけている。3年間ずっと、みっちゃんの頭をあっためてくれているそのどんぐりを、最近ではとても愛おしいカタチに思っている。
雑誌コーナーではなく、ドリンクコーナーで時間をつぶすみっちゃんが、いいな。
「みっちゃん」
首はあまり動かさないで、すっとした切れ長の目だけでこっちを向いたみっちゃんが、少し笑った。
「え、なになに、ミルクティー買ってくれるの?」
「奈歩は今年も最後まで図々しいな」
とか言いつつ、買ってくれちゃうんだもんなあ。
アイスの半分ほどの量しか入っていないペットボトルを優しくつかみ、レジまで持っていく背中をあわてて追いかける。さりげなくわたしのお気に入りのメーカーを選んでしまうところが、もう敵わないね。
「肉まんふたつください」
決して店員さんにタメ口をきかないみっちゃんが好きだよ。
わたしが100円玉を渡しても、笑って押し返してくるみっちゃんが好きだよ。
ペットボトルを手渡す前にキャップをゆるめてくれるみっちゃんも好きだし、肉まんはふたつともおれのってしょうもないいじわるを言うみっちゃんも、好き。
みっちゃんの好きなところ、挙げ始めたらキリがない。紙に書いて積み上げていったらきっと月にも届いてしまうくらい。大げさじゃないよ。
「みっちゃん、大好きだー!」
「はは! それ、ダイスキ納め?」
アツアツの肉まんを頬張った。きょうは記念すべき今年最後の日だっていうのに、宇宙はなにも特別な顔を見せないで、しんしんと凍えるだけだね。