「見て、みっちゃん!」
我慢なんか一瞬でもできるわけがなかった。さっそく手に持っていたふたつの用紙を広げる。同時に、おおと、驚いたような声がななめ上から降ってくる。
「満点? どっちも? マジ?」
「マジだよ!」
みっちゃんのおかげなんだよ。
「おれのおかげだな」
わたしが言う前に、みっちゃんは自分で言った。
思わず笑うと、痛くないゲンコツが降ってきた。
「アリガトウは?」
「ありがとう」
「はは! なんか、素直じゃん」
だって、本当に本当に、うれしくて。100って数字、久しぶりに見たから。それも、あの大嫌いな数学で見られたから!
勉強なんて大嫌いだし、できればしたくないけど、それでもこういう瞬間は少しだけ勉強と仲良くなれそうな気がしないでもないよ。
どれもこれも、みっちゃんがいてくれたから。みっちゃんが、いてくれるから。
わたし、もうちょっとこの学校でがんばれそうな気がする。
「みっちゃん、ありがとう、大好きっ」
正直、その『大好き』に、ラブ的な意味はいっさいなかった。だからこそ言ったあとで一瞬ヤバイって思ったんだけど、みっちゃんはさして気にしてないってふうに軽く笑った。
なんだかそれが、不意打ちで、すごく心地よくって。
さっきは思わず口をついて出た『大好き』が、あとになってじんわりと心に沁みわたって、ぬくい温度を持ったような気がした。