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E判定。

それがわたしの第一志望大学のジャッジ。

いくら模試を受けてもそれがくつがえることはなく、9月が終わり、10月が終わり、いよいよ季節が冬へ移り変わっても、判定は最悪のままだった。しょうがない。いままでサボってきたツケだよ。


第一志望を東京の大学に決めたのは夏休みの半ばごろだったかな。偏差値67くらい……、少なくともセンター試験で8割は得点しなければ合格できないようなところだけど、なんとなくそこ以外は考えられなかった。それにきっと目標は高いほうがいい。

正直、はじめて模試の結果を目の当たりにしたときは愕然とした。わかっていても多少ショックだった。大学に、世の受験生たちに、小バカにされている感じがした。

それでも志望大学を変えないのはシンプルなことだ。

一度決めたことを曲げるのをダセェと思うだけ。みっちゃんには大笑いされた。こっちは大まじめだってのに失礼な野郎だ。



「奈歩がT大受けるならあたしもK大受けよっかな」


いきなり羽月がなんでもないように言った。あまりに軽い言い方だったので面食らってしまう。

羽月が部を引退してからこうしていっしょに帰ることが増えたね。最近はみっちゃんのほうが遠慮してしまって、彼と夜ごはんを食べにいく木曜以外の放課後はほとんど羽月と過ごしている。

淡い紫のカーディガンがよく似合う美少女は、鞄をゴソゴソとあさり、やがてなにかをこちらに差しだした。


「見て。いまだにD判なんだけど」


突きつけられたのは直近の模試の判定票。冷たい風にぴらぴらと揺れているそれを、羽月がさらに揺らすので、判定のところになんと書いてあるのかはちゃんと見えない。


「わたしなんかEだよ、E。イーハンテー」


もはや持ちネタだね。この頭の悪さと、あきらめの悪さは、大川先生にすらあきれられてる。