「あー、でも雷にうたれて死ぬのはやだな。最期のすがたが黒コゲってサイアク」


わたしが笑いながら言うと、みっちゃんも同じ調子で笑った。


「身元不明の真っ黒な死体がふたつ転がってるってヤベェな」


こんな田舎でそんなものが発見されてしまったら大騒ぎだよ。きっとすぐニュースになる。ローカル新聞の一面に載っちゃうね。


「もしいっしょに死んだら『恋人どうしの男女が~』とかって報道されんのかな?」

「報道番組がそんな軽率なこと言うわけないだろ」


そんなもんかな。ちぇー。

口をとがらせながらタオルを奪った。髪から滴り落ちる雨がカッターシャツを濡らしていくのがどうにも気持ち悪い。


「けど、まあ、奈歩と死ねるならいいかな」

「え?」

「本望」


タオルの隙間から覗いたみっちゃんは、冗談をしゃべっているってふうに笑っていた。

でも、なんとなく、本当になんとなくなんだけど、冗談には聞こえないようにも思えた。


「最期の一瞬まですげー楽しそう」


ついさっきの閃光と轟音がよみがえる。そう、まさに雷にうたれたような感じだよ。だって、みっちゃんがそんなことを口にするなんて、思いがけない、予想外。


「……なにそれ。いっしょに死ぬんだよ? 結婚するんだもん」


わたしも冗談っぽく返した、つもりだったけど、なんだか声がうわずってしまった。


「結婚したらいっしょに死ぬ運命なのかよ?」

「そうだよ。だってわたしみっちゃんがいないと生きていけないもん」

「じゃ、おれが奈歩を見送らないと」


タイミングはもう完全に失っていた。

ほかの誰かと付き合ってる――なんて、わたしがこの男の子に言えるわけがなかったのだ。


そうだよ、だって、そうだよ。すっかり忘れていたけど。

だって、わたしは、みっちゃん無しでは生きていけないのだ。みっちゃんさえいれば生きていけるのだ。

そう。
たとえ、しょうちゃんを失っても。