わたしの在籍する1組から、みっちゃんのいる7組まで、直線で50メートルくらい。ひと学年にクラスは7つあり、それがすべて一直線に横にならんでいるから、1組と7組は端っこどうし、いちばん遠いどうしのクラスだ。

2組から6組、5つものクラスを飛び越えて廊下を駆け抜けるのは大変だった。昼休みに差しかかったところでかなり混雑もしていたし。

途中、違うクラスの友達や知り合いに、川野なに走ってんのォと笑われた。てきとうにあしらって、わたしは走った。とにかく走った。短いスカートがひるがえるのも気にしないで。

制服が、もどかしい。



「――みっちゃん!」


到着するなりうしろのドアから小さく叫ぶと、みっちゃんのかわりに近くにいた生徒が何人か勢いよくこっちを振り返った。

まずったな……そうか、7組にはみっちゃん以外の人間も大勢いるっていうこと、すっかり頭から抜け落ちていた。いま頭のなかにはみっちゃんの存在しかなかったよ。


「あ……ええと、光村くんは」


いらっしゃいますか。最後のほうは消えかかっていたと思う。


「光村ぁ! お客さん来てるよ!」


ドアのいちばん近くにいた男子が教室のなかに向かって叫んだ。とたん、クラス全体が少し慌ただしくどよめいた気がした。たぶん気がしただけ。それでも、ちょっと、いやかなり、居心地悪いなあ。


そういえば7組まで来たのってはじめてだ。やっぱりウチのクラスとはぜんぜん違うね。

空気とか、カラーとか、そういうのがクラスごとにそれぞれあると思う。それはひとつとして同じものはないんだろう。違う国、違う世界、違う惑星。教室には、ひとつひとつ異なった、独自の文明ができあがっている。


そんなことを考えながらひとり廊下でそわそわしていると、ふいに背の高い男の子がひょっこり現れた。


「みっちゃん!」

「奈歩、びっくりした」


細いつり目をきもち大きくして、みっちゃんがわたしを見下ろす。