今度こそ、と思って口を開いた。息を吸った。そして思いきり吐く。


「わたし、しょうちゃんと……」


遠くで鳴っていたはずの轟音があまりにも近い場所で聞こえたのは、ほんとにちょうどそのときだった。

視界が真っ白になり、いままでに体験したこともないような爆音が鼓膜を殴る。なにが起こったのかわからない。自分がいまどこにいるのかさえ見失うほどの衝撃。

強すぎる閃光によって奪われた視力と、轟音によって奪われた聴力とを取り戻すのに、少し時間がかかった。

世界がチカチカしている。頭がくらくらする。


「……生きてる?」


第一声がそんな間抜けな一言だったくらいには、驚いたんだよ。驚いたなんてもんじゃない。

目の前にいるみっちゃんも目を見開き、わたしの姿を確認すると、なんだか力ないように笑った。ああ、みっちゃんも生きているね。よかった。


「やべえ。雷? いまの」


たぶん、そう。10メートルほど先の避雷針に雷がモロに落ちたのだ。


「ぶ。奈歩、タマシイ抜けた顔してるし」

「だ……だって、え、ていうか生きてる? 生きてるよね?」

「はは! 生きてるよ、たぶんな」


たぶんじゃ困る!

膝が笑っているのがわかるよ。へなへなといまにも崩れ落ちてしまいそうな身体を自転車のカゴにあずけ、ひんやりとした鉄の温度を確認する。こんなささいなことで生きていると実感する。


「死ぬかと思った……」

「おれもマジで死んだと思った。雷の光と音が同時にきたのはじめてだったし」


どうしてそんなに軽快に笑っていらっしゃるのだ。みっちゃんの気の抜けたような笑顔を見て、わたしの心も腑抜けていく。おかしいの。なんだか笑っちゃう。