みっちゃんのやわらかい黒髪をタオル越しにさわりながら、なんとなくしょうちゃんのことを思い出した。思い出してしまった。
ああ、自分の知らないところでわたしがほかの男の子にこんなことをしているなんて知ったら、きっと彼はものすごく怒るんだろうな。それがみっちゃんだってんならなおさら。烈火のごとく、怒るんだろうな。
罪悪感。
みっちゃんに対して抱いているそれと同じようなものが、しょうちゃんに対しても生まれてしまった。
ちゃんと言わなくちゃなぁと思う。これからしょうちゃんと付き合い続けていくために。みっちゃんとずっとこうしているために。もしかしたらもう、みっちゃんとはこんなふうに仲良くしていられないのかもしれないけど……。
「……ねえ、みっちゃん」
雨音にかき消されないよう、なるだけ声を張った。
ピンクのヒョウ柄で頭を拭くみっちゃんの切れ長の目がわたしを見た。
「あのさ」
「なに?」
「あのさ――」
――夏休み前から、しょうちゃんと付き合ってる。
そう言ったつもりだったのに、おかしい。声が聞こえない。
高架の上を電車が通過したせいだった。なんだよ、もう、こんな大事なときに電車なんか走らせるなよ。
「なんて?」
みっちゃんが聞き返してくる。すっかりやる気も決意も削がれていたけど、もう一度、仕切りなおして背筋を伸ばした。
みっちゃんの向こう側で大粒の雨は休みなく降り続けている。強く地面を叩いては跳ねるその運動は、永久に終わらないような気がして、少し恐ろしい気持ちにさえなった。
「奈歩?」
ああ、言わなきゃ、言わなきゃな――