◇
この宇宙のドまんなかに居座る男の元にも、平等に夏の終わりはやってきた。
彼の試合はわたしたちが『男女逆転白雪姫』の練習をしているあいだに終わった。約1時間の台詞練習と約30分の通し練習とをグダグダやったあと、ケータイの画面をリロードしてみると、試合終了となっていたのだ。午後3時過ぎのことだった。
ケータイを握りしめてかたまっているわたしに、花純ちゃんが「帰らないの?」と声をかける。
「このあとキョウヘイくんたちハロハロ食べにいくって! 奈歩ちゃんも行こうよ」
「あ、うんっ」
あわててスクバをひっつかみ、もうすでに教室を出ているクラスメートを追う。
そのあいだにもわたしの頭のなかにはスコアボードの映像が浮かんだままだった。
6回に2点と、7回に1点をとられていた。9回で1点をとり返していた。
1-3。
1-3で、しょうちゃんが、負けたんだ。
店内のイートインでハロハロを食べながらだべっている輪の端っこで、わたしは押し黙り、試合の実況と解説を読んでいた。隅から隅まで読んだ。何度も読んだ。
しょうちゃんはサードで出場していた。打順は8番目。下位だけど、この実況を読む限り、とり返した1点には貢献していたみたいだった。『最終回、松田のバントで進塁し――』だって。昔からバントは大嫌いだと言っていたのに、チームのために、それをやったんだね。
最終回の1点にものすごく大きな意味を感じる。意地を感じる。想いを感じるよ。
終わったなんてとても思えない。まだ彼の夏は続いていくんじゃないかと錯覚してしまう。だって、まだ行ってないよ、甲子園。
いつも送っているお疲れさまメールを、なんとなくどうしても、きょうは能天気に送ることができなかった。
この宇宙のドまんなかに居座る男の元にも、平等に夏の終わりはやってきた。
彼の試合はわたしたちが『男女逆転白雪姫』の練習をしているあいだに終わった。約1時間の台詞練習と約30分の通し練習とをグダグダやったあと、ケータイの画面をリロードしてみると、試合終了となっていたのだ。午後3時過ぎのことだった。
ケータイを握りしめてかたまっているわたしに、花純ちゃんが「帰らないの?」と声をかける。
「このあとキョウヘイくんたちハロハロ食べにいくって! 奈歩ちゃんも行こうよ」
「あ、うんっ」
あわててスクバをひっつかみ、もうすでに教室を出ているクラスメートを追う。
そのあいだにもわたしの頭のなかにはスコアボードの映像が浮かんだままだった。
6回に2点と、7回に1点をとられていた。9回で1点をとり返していた。
1-3。
1-3で、しょうちゃんが、負けたんだ。
店内のイートインでハロハロを食べながらだべっている輪の端っこで、わたしは押し黙り、試合の実況と解説を読んでいた。隅から隅まで読んだ。何度も読んだ。
しょうちゃんはサードで出場していた。打順は8番目。下位だけど、この実況を読む限り、とり返した1点には貢献していたみたいだった。『最終回、松田のバントで進塁し――』だって。昔からバントは大嫌いだと言っていたのに、チームのために、それをやったんだね。
最終回の1点にものすごく大きな意味を感じる。意地を感じる。想いを感じるよ。
終わったなんてとても思えない。まだ彼の夏は続いていくんじゃないかと錯覚してしまう。だって、まだ行ってないよ、甲子園。
いつも送っているお疲れさまメールを、なんとなくどうしても、きょうは能天気に送ることができなかった。