「うん。あのねえ……」
なんだか間延びした声が出ちゃったな。
ぽつぽつ、わたしは話した。どこまで遡ればいいかわからなかったけど、修学旅行の夜からきょうまでのすべてを話した。なぜか勢いあまってワタッチとキョウヘイのことまで。
みっちゃんはなんにも言わないで、わたしの小さな声に耳を傾けてくれていた。たまに笑ったり相槌をうったりしてくれるのが信じられないほど心地よかった。
「ほら、また悪い癖でてるじゃん」
あきれたように笑いながら、みっちゃんは言った。
「奈歩は自分が悪いって思いたいだけだろ」
「……違うし」
なにが違うんだよ、だってさ。チガウもん。違わないけど。わかってるよ。わたしの自己卑下は病的だ。
だってやっぱり、自分が悪いって思うのがいちばん楽なんだよ。楽でしょう?
「たしかに、浮気のこと、中本さんと曽根さんにはすぐ言うべきだったな。でもなにも言えなかった奈歩が『間違ってる』わけじゃない。言えないだろ、そんなの。どんな顔でなにを言うんだよ? しょうがなかったよ」
みっちゃんはいいな。みっちゃんはすごいよ。
そんなふうにさらりとすべてを割りきれたら、しょうがないって思えたら、わたしもみっちゃんみたいに強くなれるのかな?
「大丈夫だって」
半べそのわたしを見て、みっちゃんはまた涼しく笑う。
「正直、女子のトモダチ事情はわかんねーけどさ。そんだけ言いあって、泣きあって、ぶつけあったんなら、いますぐには無理でも10年20年あとで、きょうのことを笑い話にできたりするんじゃない?」
まあ知らないけど。って、最後に添えちゃったせいで台無しだ。
それでも、そのよけいな一言こそがきっといちばん必要だった。みっちゃんの言葉って感じがするから。取り繕ってない、嘘じゃない、みっちゃんの“本物”のしるしだから。
大丈夫。みっちゃんが本物の言葉でそう言ってくれた。
だから、わたしは、うん、大丈夫だ。