その夜、羽月から呼び出された。お互い現役の女子高生とは思えないほどのダサいジャージ姿で、ふたりの家のまんなかにある空き地で会った。

もうずいぶん暑くなってきたと思っていたけど、夜はやっぱりかなり冷えるね。もう少し厚手のプルオーバーを着てくればよかった。


「きょう、ごめんね」


顔を合わせるなり、羽月はいきなり言った。


「パニックになってて。部室飛びだしたところでさ、ちょうど奈歩のうしろ姿が見えて。思わず手がね、こう、動いちゃってた」


言いながら、ムチっとした手が空をつかむ。


「……あのあと、どうなったの? 大丈夫だった?」

「うん、一応は収束したっぽい。まだぎこちないけどね。秋山さんの件はずっとキョウヘイがこだわってるんだと思ってたんだけど、キョウヘイよりワタッチのほうがダメだったことに、みんな気付けてなかったよ」


つくりもののように大きな瞳が天を仰いだ。夜空を飾るあの星たちが、羽月の濡れた両目のなかをゆらゆらと泳いでいる。

途方もない気持ちがした。羽月が見せる美しすぎる世界に、なんだか耐えられないような気になった。


「あたし、マネージャーなのに、情けないなあ」


いつも強気な羽月が、どこか自嘲するように言った。


「そんなことないよ。部員のためにあんなふうに泣けるんだもん、羽月はすごく立派なマネージャーだと思う」

「奈歩はいっつもツンツンだけど、ほんとはいっつも優しい」


またこの子は、いったいなにを言うんだか。わたしほど冷たい人間ってなかなかいないと思うけど。


「奈歩は、星みたい」


羽月は、両目にあの輝きたちを宿したまま、敢然と言った。


「すっごく遠いの。触れさせてくれないの。だから、いつも、すごい冷たく感じるの。でも、さみしそうに光ってるの。いつまでも光ってるの。いつまでも、あたしのこと、照らしてくれてるの」


だから、優しい、と。

なんでそんなこっ恥ずかしいことをふつうに言えるのか。外気にさらしている両腕にみぞみぞと鳥肌が立つ。