ミキはきっと、ものすごく傷ついたんだよ。
そりゃそうだ。大好きな彼氏と、大好きな友達が、自分の知らないところで浮気してたんだもん。想像しただけでぞっとする。絶対に許せないし、きっともうなにも信じられなくなる。
だから、ミキが、ナミとしゃべりたくない、顔も見たくない、わたしとナミに仲良くするなと思う気持ちだって、わかるんだよ。わかるんだ。わかっているつもりだ。
「あー!」
たまらず、足をバタつかせた。アレコレ考えていたら頭が爆発しそう。
みっちゃんがうおっと声を出し、大きくぐらついた車体をなんとかつかまえている。
「だからうしろ乗ってるときに暴れるのやめろって!」
「暴れてないっ」
「ほんとに落ちても知らないからな」
わたしといっしょに荷台に居座っている、みっちゃんの赤いプーマをぎゅっと抱きしめたあとで、ぽこぽこと殴った。チャックをあけてみる。教科書と参考書が出てくる。数ⅢCだって。なんだかこいつらにバカにされているような気になった。
「なあ、どうしたんだよ?」
「どうもしないっ」
「なんだよ、機嫌わりぃ。出したもん落とすなよ」
あ、勝手に鞄のなかまさぐってるの、ばれてる。
「わかってるよう。でも数学なんか嫌いだ」
「おれは好きだ」
「わたしとどっちが好き?」
「数学」
「みっちゃんってクソヤロウだ」
「いまさら知った?」
今度は鞄じゃなく学生服の背中を殴った。ぽこぽこってより、ドスドスって感じに。