ひとつめの角を曲がったところでいきなりウエストをさわりだしたわたしに、みっちゃんは「早いな」とあきれながら言った。


「スカートが短いからなんだってんだよう」

「まあ、たまに目のやり場に困るよ、風の強い日とか」

「嘘だね。みっちゃんがわたしにドキドキするわけないもん」

「ばれた」


笑いながらみっちゃんが歩みを止める。自転車にまたがり、わたしの準備が整うのを待ってくれているようだった。

よし、ばっちり、膝上15センチ。2年間ずっとこの丈なんだからやっぱりこうじゃないと落ち着かないよ。

最後にぱんっとプリーツを整えるのを、みっちゃんは終わりまでじっと見届けてくれた。荷台にまたがる。わたしが体重をかけるのと同時に、みっちゃんの左足がペダルを踏みこむ。


「あ、奈歩っ」


ちょうどそのとき、聞き覚えのある声に引き止められた。バランスを崩したみっちゃんが右側によろけた。


「ミキ?」


振り返った先にはバスケ部のジャージを着たミキがいた。息が上がってる。どうやら外周をしてたみたいだ。


「あ、ごめーん。つい呼び止めちゃった! 光村くんも、ごめんね」

「いや、ぜんぜん、大丈夫っす」


なに敬語になってんだ。みっちゃんはわたしの友達の前だと猫をかぶるから嫌なんだ。


「新しいクラスどう?」


何気ない一言だったけど、なんとなく、牽制されているような気がした。


「ふつうだよ。ミキがいないから静かだけど」

「あはは、なにそれ、ひどくない!?」


こんなにかわいく笑う女の子なのにな。明るくて、健康的で、おもしろくて。男女問わずミキにたくさんの友達がいること、しゃべるたびに納得できるよ。

楽しいな、仲良くなれてよかったなって、わたしだっていつも思ってる。


「……ねえ。奈歩はウチのこと、裏切らないでね」


きらりと光る額の汗をぬぐいながら、ミキは1トーン落とした声で言った。あいまいにうなずくしかできない自分がほんとに嫌だって、心の底から思った。