みっちゃんのおかげでせっかく気分よくなりかけてたのに、校門を出たところで生徒指導が待ち構えていたのには参った。「コラッ川野!」と遠くからデカイ声で怒鳴られたので、仕方なく3回折っていたスカートを全部戻す。
「なんだぁ? その顔は」
「めんどいよ、せんせえ、いちいち。きょう服装チェックの日だっけ?」
「抜き打ちだ。ほんとにおまえはいいかげんにしろよ」
普段は太ももの半分より上にあるプリーツの先端が、いまは膝の裏を撫でるので、もぞもぞして気持ちが悪い。
あーあ、だっせえの。そりゃ、スカート丈が長くても似合う子はいいけどさ。わたしみたいなキツイ感じの老け顔は、短いほうが似合うんだよ。まあ、こんなこと言っても、学校でファッションなんかどうでもいいとか言って跳ねっ返されるんだろうけどさ……。
「光村だって嫌だよな?」
かっちり制服を着ているわけでもないが特別だらしないわけでもない、文句のつけようがないみっちゃんに、生徒指導はいくらかやわらかい声色で話しかけた。
「彼女がこんなに脚出してたら、心配になるもんだよなぁ?」
「――げぇほっ」
噎せたのはみっちゃんだった。あまりに盛大に噎せるので、わたしのほうはそうするタイミングを失ってしまった。
「先生まだそんなこと言ってんの……」
みっちゃんのかわりに答える。生徒指導はなにを言われているかわからないって顔をする。
「生徒の恋愛事情にアレコレ口出さないほうがいいよ、マジで。別れたりとかもあるんだからさ」
「え……おまえたち、別れてたのか。それはすまんかった」
もう笑ってしまった。さすがのみっちゃんもバカバカしいって感じに力なく笑った。
「せんせー、ばいばーい」
「スカート丈戻すんじゃないぞ!」
ばぁか。誰がこのまま家まで帰るもんか。