セーラー服の白襟を横目に、机に突っ伏した。月のしずくは純喫茶だから、テーブルはふつうのカフェよりも低くて、革のソファにお尻を突きだす形になってしまった。
「あー。勉強したくない」
「そうも言ってられないだろ」
「やだぁ。わかんないもん、数学……」
「わかるまで、付き合うから」
みっちゃんは汚いものを見るようにわたしのテストを見たけど、それでもやっぱり怒ったりはしなかったね。
新年早々、呼び出して、テスト対策に付き合わせたのに。
朝から夕方まで、貴重な冬休みをまるまる一日つぶしてしまったのに。
それでも15点という冗談みたいなスコアをたたき出したわたしに、みっちゃんは、決して怒らない。
「再試はいつも、ほとんどテストこのまま出るんだろ?」
「うん」
「じゃあ奈歩の得意分野じゃん。暗記と理解、半分ずつでいけるよ」
気休めかもしれない。でもその言葉でがぜんやる気がでるんだから、みっちゃんはすごい。
「……がんばります」
「よろしい。今度こそ満点な」
「今度はいける気がする」
「言ったな?」
言ったよ。いける気がするよ。みっちゃんがいてくれるからね。
そう言うと、みっちゃんははじめメンドクセって口をとがらせたけど、次の瞬間にはどこか得意げに笑っていた。