「……こないだ、悪かったな」


ぽつりと落ちた言葉はあんまりにも意外すぎて、出鼻をくじかれた気がした。しょうちゃんって、人に謝ることのできる男だったんだ……。


「空気悪くしたよな。ミツに怒られたよ。奈歩が慌てふためいてたって」

「そんなことないよ」


すかさず答える。しょうちゃんは眉を下げて少し笑うと、そうかよ、とこぼした。


「思ったより仲良くなっててびっくりしたんだ」

「え?」

「奈歩とミツ」


漫才コンビみたいだなあ。なんて、くだらない感想がポコッと生まれたけど、黙っておいた。相手がみっちゃんだったらきっとかまわず言ってた。

しょうちゃんの前ではどうしてもかわいこぶっちゃうね。こんなときはいつも、ああ、わたしも女だったんだなって思い出す。


「ミツも奈歩も、もともとおれの友達でさ……。なのにちょっと置いてけぼり食らったっつーか」

「……うん。ごめん」

「べつに奈歩が謝ることじゃねえよ。ただおれが勝手に拗ねただけ」


こういうこと、なんの格好もつけずに素直に口にできるの、やっぱりすごいなって思う。そしてものすごく申し訳ない気持ちになる。

やっぱりみっちゃんを呼んだのは間違いだった。そしてみっちゃんはたぶん、こうなることをわかっていたんだと思う。しょうちゃんにも、みっちゃんにも、悪いことしちゃったな。わたしのわがままで。


「あのさ。今度からは、ふたりで会おうね」


もし今度があるなら。

おそるおそる言ったわたしに、しょうちゃんは笑った。おもいきり。目元をくしゃくしゃにして。すごく安心した。


「そうだな」


大きすぎる窓から差しこむ陽の光を浴びて、わたしの太陽が笑っている。ああ、よかった、このエネルギーをなくしてしまうかと思っていたから、ほんとによかった。