「おれ、トンデモネエやつの勉強係になっちまったなあ……」


数Ⅰと、数A。ほとんどマルのない、白と黒だらけな2枚のテストを交互に眺めながら、みっちゃんが大きなため息をつく。それでも自分のこと『勉強係』とか言っちゃうみっちゃんはおもしろい。飽きない。


「そう言うみっちゃんは何点だったのよう」

「100と99」


みっちゃんは、なんでもないことみたいにさらりと言った。


「それは、なんだ、逆になにを間違えたんだ……」

「間違えたっていうか、式がいっこ抜けてて、そんで減点されてた」


ということは実質100点じゃないか!

もうはじめからアタマのつくりが違うんだろうな。こういう人にとって、わたしが数学をわかんないっていう思考こそ、まるっきりわかんないことなんだろうな。

嫌になる。無理して進学校と呼ばれる高校になんか入らなきゃよかった。


「いいなあ、みっちゃん。どうしたら頭ってよくなるの?」

「言っとくけど、おれはたぶん人並みには勉強してるからな」


それってまるでわたしが勉強してないみたいな言い方。

まあ、してないんだけどさぁ。

家に帰ったらダラダラお母さんとしゃべって、犬たちと遊んで、テレビ見ながらごはん食べて、ゆっくりお風呂に入って、寝て。課題はだいたい翌朝、学校についてから急いでやっている。友達に見せてもらったりもしているし……。


「華の女子高生、どうしてこうも勉強しなきゃいけなんだろう」


中学までの勉強は、やらなくてもそこそこできていた。学年でトップテンとは言わないけれど、20番以内にはいつも必ず入っていた。

いままで勉強のことで悩んだことなんかは一度もなかったのにな。本当に嫌になる。たまに、本当に全部投げだしたくなる。高校なんかやめてしまいたくなる。