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朝の9時に駅に集合――だったのに、その時間に目覚めたわたしはとんでもないやつだ。でも予告されたようにはシメられなかった。10時になってやっと駅に到着したわたしに、しょうちゃんはあきれたように笑っただけだ。


「行くか」


年が明けたというのに、新年の挨拶もナシだよ、この男。さすがだね。


「どこへ?」

「いいから」


ついてこいと言わんばかりに、球児のたくましい脚はずかずか歩いていく。わたしは付き人のように黙ってついていく。

ああ、つい1時間に起きたばかりだからか、なんだか頭がぼうっとしているよ。しょうちゃんの広い背中がゆらゆらしている。きょうも青いダウンジャケットだ。


その青が歩みを止めたのは、意外にも駅のすぐ近く、こぢんまりしたビルの入り口の前だった。入口――というより、裏口?

どこかの会社か、自治体が運営する建物かな? こんな場所にこんなビル、あったっけな? ていうか、ここに、なんの用があるんだろう……。

あれこれ考えているうちに、しょうちゃんはためらいもせずにドアを開けた。そして無遠慮に入っていく。わたしは固まったまま、動けずにいた。


「……なにしてんの?」


それはたぶんこっちの台詞だ。


「勝手に入っていいの……?」

「いいよ。おれら、中学ンときよく遊びに入ってた」


しょうちゃんがとんでもねえ悪ガキだったって話、ほんとだったんだな。この男とはたしかに中学のころから知り合いだけど、そういう顔は知らなかった。