ファミレスに入ったはいいものの、座席の配置が明らかにおかしい。わたしとみっちゃんが隣どうしで、わたしとしょうちゃんが向きあうかたち。こういうのってふつう男子どうしが隣りあうものじゃない? 特に、わたしたちはどこも付き合ったりしてないんだし。

どうしてこんなふうになったのか不思議だけど、みっちゃんは本当に自然にわたしの隣に座った。日ごろの癖がこんなところで発揮されてしまったのだと思ったよ。いつも隣にいるから。

しょうちゃんはなにも言わなかった。それは少しほっとした。


明太子パスタを頼んだ。わたしが個人的に頼んだはずのポテトは、いつの間にか3人でシェアすることになっていた。

いろんな話をしたし、聞かせてもらった。みっちゃんは中学2年のころまでべらぼうに背が低かったとか。しょうちゃんはとんでもねえ悪ガキだったとか。あとはわたしがどれほど勉強できないかとか。

わたしの話はいいんだ。言うまでもなくバカなのはここにいるみんなが知っていると思うから。

それより、みっちゃんとしょうちゃんの話を聞きたいのに……。


「そういやきのう、駅でアカネに会ったけど」


突然、しょうちゃんが思い出したように言った。

アカネ?


「ああ……」


みっちゃんがなんともいえない苦笑いを浮かべた。


「なんだよ、まだ気まずいのかよ?」

「そんなんじゃない、ぜんぜん」

「クラスのやつらで集まってもおまえらしゃべんねえもんな」

「そんなんじゃないって」


からかうように笑うしょうちゃんと、苦笑いのまま小さく首を振るみっちゃん。

もしかして……と思うのと同時に、ハテナマークを浮かべているわたしにしょうちゃんが気付いて、「元カノ」と言った。ああ、なるほど、『ふたりくらい』のうちのひとりだね!


「なあ、松田、マジでその話はいいよ」

「なんだよ? 終わったことなんだからべつにいいだろ」

「だったらおまえもチホの話しろって」

「おいミツ、よけいなことしゃべってんじゃねえよ」

「先に言い出したのは松田だろ」


チホ……というのは、しょうちゃんの元カノ? かな? そうだよね、話の流れ的に。

アカネがみっちゃんの元彼女で、チホがしょうちゃんの元彼女で……。ぜんぜん知らない名前だ。当たり前か、違う中学だったんだし。

そうかあ、ふたりも――しょうちゃんも、それなりに恋愛をしてきたのかあ……。

べつになんにも不思議じゃない。わたしだってヨシダと付き合ってたんだ。